首都圏、特に東京都では、家庭の事情や子どもの個性に応じて、在学中に別の学校への進学を考えるご家庭が年々増加しています。中でも注目されているのが「私立中学校への編入」です。
この「編入」とは、現在在籍している学校を途中で退学し、別の学校に再入学することを意味します。編入を希望する理由は家庭ごとにさまざまですが、主に以下のようなケースが多く見られます。
東京都の私立中学校は、こうしたニーズに対して比較的柔軟な姿勢を見せる学校が多くあります。特に、近年では「帰国生入試」や「編入学試験」を積極的に導入している学校も増えており、子どもにとってよりよい学びの場を選ぶ選択肢が広がっています。
とはいえ、私立校の編入には公立校とは異なる独自のルールや試験制度があり、情報があまり表に出てこないことも少なくありません。タイミングや募集人数、試験科目、出願手続きなど、各校ごとに異なるため、しっかりと情報収集を行った上で準備を進めることが必要です。
本記事では、私立中学校への編入を検討しているご家庭に向けて、「編入とは何か」といった基本的な知識から、試験の傾向や出願の流れ、さらに東京都内で実際に編入を受け入れている代表的な学校まで、詳しく解説していきます。
編入の時期はいつ?
東京都の私立中学校では、編入の受け入れ時期は学校ごとに異なります。公立校と違って画一的なスケジュールがないため、「いつ」「どのタイミングで」編入できるのかを正しく理解することが非常に重要です。ここでは、代表的な編入のタイミングと、それぞれの特徴・注意点を紹介します。
1. 1学期末(春)編入
- 発表時期:6月中旬頃(2025年度は6月12日公表)
- 対象学期:4月〜6月に空き枠がある場合
- 特徴:学年途中での転・編入が可能で、試験形式・出願条件は学校により異なる
2. 2学期末(秋)編入
- 発表予定:11月上旬頃(2025年度)
- 対象学期:7月〜9月ごろ(概ね2学期開始時)
- 特徴:帰国子女・転勤家庭向けに利用されることが多い
3. 3学期末(冬〜春休み)編入
- 発表予定:翌年2月中旬頃(例:2026年2月中旬)
- 対象学期:10月〜翌年3月までの期間
- 特徴:年度末の人事異動などで転校希望が増える時期
応募資格と必要書類
私立中学校への編入には、各校ごとに応募条件(受験資格)が定められており、大きく分けて以下の3つのカテゴリがあります。
① 転勤・転居による編入
保護者の仕事や家庭の事情による「居住地の変更」が編入理由の場合です。
- 条件例:
- 保護者の勤務先の異動や転職により転居が発生した
- 住宅事情により通学が困難になった
- ポイント:
- 転居先からの通学が可能かどうか、学校の通学区域も確認が必要
- 具体的な転居先住所の証明が求められる場合あり
② 海外からの帰国による編入(帰国子女)
海外駐在からの帰国や、長期留学を経て日本の学校に戻る場合です。
- 条件例:
- 一定期間(例:1年以上)海外の学校に在籍していた
- 現在帰国済み、または編入前に帰国予定であること
- ポイント:
- 英語での教育を受けていた場合、英語力を評価する学校もある
- 日本語指導サポートの有無も学校によって異なる
③ 条件なし(一般枠での受け入れ)
転勤や帰国とは無関係で、一般家庭の事情による転校を希望するケースです。
- 条件例:
- 教育環境の変更を希望して転校を検討
- 現在の学校が合わない/学校不適応など
- ポイント:
- 学力審査・面接が重視される傾向
- 空き枠が少ない場合もあるので、競争率がやや高い
提出書類
編入試験の出願時には、以下のような書類の提出が必要になります。多くの学校で共通して求められる項目です。
1. 願書(入学願書)
- 編入を希望する学年・コース・個人情報などを記載
- 学校指定のフォーマットがある場合が多い
2. 在学証明書
- 現在在籍している学校が発行
- 学年・在籍期間・学校名などを記載
3. 成績証明書(調査書)
- 過去の学期ごとの成績を証明する書類
- 小学校・中学校の先生から提出されることが多い
4. 転学照会書(転校確認書類)
- 編入にあたり、現在の学校との情報共有を目的に使用される
- 所属校長の署名・押印が必要な場合もある
5. 転居/転勤/帰国を証明する書類
- 例:
- 保護者の辞令書や転勤証明書
- 海外生活の記録(パスポート、在学証明など)
- 賃貸契約書や住民票などの転居を証明する書類
- 必要書類は学校によって異なるため、必ず事前確認が必要
6. 入学検定料(受験料)
- 金額は学校によって異なる(おおむね5,000円〜20,000円程度)
- 銀行振込、現金書留、オンライン決済など、支払い方法も様々
編入生を受け入れている東京都の私立中学校
以下は、2025年6月12日に、東京私立中学・高校協会で発表された1学期末(春)編入の「転・編入試験実施校一覧」です。
① 転勤・転居による編入
男子校
東京都市大学付属(偏差値61)
暁星(偏差値58)
成城(偏差値55)
佼成学園(偏差値53)
京華(偏差値46)
女子校
豊島岡女子学園(偏差値70)
頌栄女子学院(偏差値62)
普連土学園(偏差値58)
東京女学館(偏差値55)
晃華学園(偏差値53)
昭和女子大学附属昭和(偏差値52)
大妻中野(偏差値51)
実践女子学園(偏差値50)
光塩女子学院中等科(偏差値48)
十文字(偏差値46)
佼成学園女子(偏差値45)
女子聖学院(偏差値43)
中村(偏差値42)
江戸川女子(偏差値42)
東京家政大学附属女子(偏差値40)
桐朋女子(偏差値38)
北豊島(偏差値37)
和洋九段女子(偏差値37)
京華女子(偏差値37)
共立女子第二(偏差値36)
トキワ松学園(偏差値33)
聖ドミニコ学園(偏差値31)
富士見丘(偏差値31)
川村(偏差値31)
藤村女子(偏差値30)
駒沢学園女子(偏差値30)
聖心女子学院中等科(ー)
共学
開智日本橋学園(偏差値62)
青稜(偏差値60)
ドルトン東京学園中等部(偏差値56)
かえつ有明(偏差値53)
宝仙学園(偏差値51)
桜美林(偏差値49)
八王子学園八王子(偏差値48)
サレジアン国際学園(偏差値43)
東京成徳大学(偏差値41)
啓明学園(偏差値41)
八雲学園(偏差値40)
上野学園(偏差値38)
目白研心(偏差値33)
城西大学附属城西(偏差値33)
明星(偏差値33)
新渡戸文化(偏差値30)
② 海外からの帰国による編入
男子校
海城(偏差値66)
巣鴨(偏差値64)
東京都市大学付属(偏差値61)
暁星(偏差値58)
成城(偏差値55)
佼成学園(偏差値53)
京華(偏差値46)
聖学院(偏差値46)
女子校
豊島岡女子学園(偏差値70)
香蘭女学校中等科(偏差値64)
頌栄女子学院(偏差値62)
田園調布学園中等部(偏差値62)
普連土学園(偏差値58)
東京女学館(偏差値55)
晃華学園(偏差値53)
昭和女子大学附属昭和(偏差値52)
大妻中野(偏差値51)
実践女子学園(偏差値50)
光塩女子学院中等科(偏差値48)
十文字(偏差値46)
佼成学園女子(偏差値45)
女子聖学院(偏差値43)
中村(偏差値42)
江戸川女子(偏差値42)
神田女学園(偏差値41)
大妻多摩(偏差値41)
東京家政大学附属女子(偏差値40)
桐朋女子(偏差値38)
和洋九段女子(偏差値37)
京華女子(偏差値37)
北豊島(偏差値37)
共立女子第二(偏差値36)
トキワ松学園(偏差値33)
聖ドミニコ学園(偏差値31)
富士見丘(偏差値31)
川村(偏差値31)
藤村女子(偏差値30)
駒沢学園女子(偏差値30)
聖心女子学院中等科(ー)
共学
渋谷教育学園渋谷(偏差値71)
広尾学園(偏差値69)
広尾学園小石川(偏差値64)
開智日本橋学園(偏差値62)
青稜(偏差値60)
成蹊(偏差値58)
ドルトン東京学園中等部(偏差値56)
淑徳(偏差値55)
芝国際(偏差値53)
かえつ有明(偏差値53)
宝仙学園(偏差値51)
桜美林(偏差値49)
八王子学園八王子(偏差値48)
サレジアン国際学園(偏差値43)
文化学園大学杉並(偏差値41)
東京成徳大学(偏差値41)
啓明学園(偏差値41)
八雲学園(偏差値40)
上野学園(偏差値38)
目白研心(偏差値33)
城西大学附属城西(偏差値33)
明星(偏差値33)
順天(-)
修徳(-)
③条件なし
男子校
なし
女子校
神田女学園(偏差値41)
国本女子(偏差値35)
東京純心女子(偏差値36)
白梅学園清修(偏差値31)
東京家政学院(偏差値30)
小石川淑徳学園(-)
愛国(-)
日本体育大学桜華(-)
共学
明星学園(偏差値33)
和光(偏差値32)
目黒学院(偏差値30)
駿台学園(偏差値30)
清明学園(-)
まとめ:編入には事前の準備と学校ごとの確認が不可欠
東京都の私立中学校への編入には、「転勤・転居」「海外からの帰国」「一般家庭の事情」など、さまざまな理由に応じた応募資格が用意されています。それぞれの背景に合わせて出願できるよう、柔軟な制度を整えている学校も増えており、環境の変化に伴って子どもに最適な学びの場を選び直すチャンスとも言えます。
一方で、編入に際しては必要書類の準備や学校ごとの条件確認が非常に重要です。願書や在学証明書はもちろんのこと、転居や転勤を証明する書類、成績証明、転学照会書など、学校側に提出する情報は多岐にわたります。
さらに、書類の形式・提出方法・受付期間は学校ごとに異なるため、「東京私学協会の発表をチェックする」「志望校に早めに問い合わせる」「スケジュールに余裕を持つ」ことが、スムーズな編入のカギとなります。
お子さまが新たな環境で前向きに学び、安心して学校生活を送るために、保護者の方がしっかりと情報を集め、準備を整えることが何よりも大切です。