「給食ってどんな感じなんだろう?」と疑問に思うお子さんは少なくありません。中国から日本へ転校してきた子どもにとって、給食はまさに“新しい学校生活の象徴”のような存在です。中国ではお弁当を持参したり学食で好きな料理を選んだりすることが多いため、「みんなで同じ食事をいただく」という日本独特のスタイルは初めての体験になるでしょう。ここでは、給食の仕組みや意義、そして実際に体験した子どもや保護者の声を交えながら、日本の学校給食を紹介します。

学校給食とは?
日本の学校給食は、学校が子どもたちに提供する昼食のことを指します。全国の小学校ではほぼ実施されており、中学校でも多くの地域で行われています。献立は栄養士が考案し、給食センターや学校の調理室で調理されます。基本的な内容は、主食(ごはんやパン)、主菜、副菜、汁物、そして牛乳という組み合わせです。
給食は単にお腹を満たすものではなく、教育の一環でもあります。日本では「食育(しょくいく)」と呼ばれる考え方が浸透しており、子どもたちは給食を通じて健康的な食生活を学び、仲間と協力して食べる楽しさを体験します。
給食の特徴
日本の学校給食には、いくつかの大きな特徴があります。
まず、栄養バランスが徹底されていることです。栄養士がカロリーや栄養素を計算して献立を作るため、偏った食事になることがありません。野菜や魚、豆類など、家庭ではなかなか毎日取り入れるのが難しい食材も自然に食べられるようになっています。
次に、全員が同じものを食べるという点です。中国の学校ではお弁当や学食の選択が多いですが、日本の給食では全員が同じメニューをいただきます。このスタイルは「食べ物を分け合い、感謝していただく」という教育的意味合いも強く、食卓を共にすることで一体感が生まれます。
また、配膳や片付けを子どもたち自身が行うのも特徴的です。当番の子どもたちが給食室から食缶を運び、クラスで配膳します。食べ終わった後は食器を片付け、残菜をまとめます。こうした一連の活動は、食べ物を「用意する人」の立場を体験し、食材や調理に感謝の気持ちを持つきっかけとなります。
さらに、季節や地域を意識した献立も魅力の一つです。節分には豆料理、ひな祭りにはちらし寿司、冬にはけんちん汁など、行事や伝統食が取り入れられることも多く、日本の文化を味わう機会となります。
日本の給食の特徴とは?
✅ 栄養バランスが徹底されていること
✅ 全員が同じものを食べる
✅ 配膳や片付けを子どもたち自身が行う
✅ 季節や地域を意識した献立

毎日お弁当を作らなくていいので助かっています。栄養のバランスも考えられているので、安心して任せられます。



家では野菜をあまり食べなかったけど、給食では友達と一緒だから頑張って食べられるようになりました。今では好き嫌いが減ってきた気がします。



最初は、給食ってどんなものが出るんだろう、とドキドキしていました。中国ではお弁当を持っていくことが多かったので、みんなと同じものを食べるのはちょっと不安でした。でも、カレーの日にみんなが『やったー!』と盛り上がっていて、同じ食事を分かち合う楽しさを初めて知りました。



最初はアレルギーや好き嫌いが心配で、子どもがきちんと食べられるか不安でした。でも学校から毎月『給食だより』や献立表が配られるので安心しました。子どもが『今日は魚だったけど意外とおいしかったよ』と話してくれると、日本の学校に馴染んできたんだなと感じます。
不安を和らげるために
給食は日本の学校生活における大きな特徴のひとつですが、初めて経験する子どもや保護者にとっては不安の種になることも少なくありません。食材や味付けの違い、好き嫌い、アレルギーの有無など、心配は尽きないものです。しかし、実際には学校側もこうした不安にしっかりと対応しており、過度に心配する必要はありません。
特にアレルギーへの配慮は年々進んでいます。入学や転入の際に保護者がきちんと申告すれば、医師の診断書をもとにした代替食の提供や、特定食材の除去対応がなされる場合が多いのです。例えば牛乳アレルギーの子どもには牛乳の代わりにカルシウム入りの飲料が用意されたり、卵アレルギーの子には卵を使用しない献立が提供されたりすることがあります。ある保護者は「最初は本当に大丈夫かと不安でしたが、先生から『一緒に工夫しましょう』と丁寧に説明を受けて安心しました」と振り返っています。
また、学校からは毎月「献立表」が配布されるため、家庭で事前に確認することができます。この献立表を使って「明日はカレーだね」「このおかずはちょっと苦手かもしれないけれど、友達と一緒なら食べられるかな」と親子で話し合えば、子どもが心の準備をする助けになります。実際に、ある子どもは「給食表を見て楽しみに待っていると、食べるときに不安が少なくなる」と語っていました。



給食表を見て楽しみに待っていると、食べるときに不安が少なくなる
さらに、給食の内容を家庭の食卓で再現することも不安を和らげる一つの方法です。事前に似たメニューを作っておき「これは学校でも出るよ」と伝えることで、子どもは「もう食べたことがある」と安心できます。例えば、筑前煮やけんちん汁など、日本の伝統的な家庭料理が献立に並ぶこともありますが、転校してきたばかりの子どもにとっては見慣れない料理です。家庭で一度経験しておけば、学校で初めて食べるときの抵抗感がぐっと減るのです。
不安をやわらげる上で大切なのは、「食べられる・食べられない」を一度で判断せず、子どもが少しずつ慣れていけるように温かく見守ることです。保護者の中には「最初は無理に食べさせるのではなく、『一口だけ挑戦してみよう』と声をかけるようにしました。するとある日突然、全部食べられるようになったんです」と語る方もいます。
給食に対する不安は、子どもだけでなく親にとっても大きなテーマですが、学校との連携や家庭でのちょっとした工夫で確実に和らげることができます。そして、その過程で子どもは「食べ物に挑戦する勇気」や「仲間と一緒に食べる楽しさ」を学び、学校生活に前向きな気持ちで取り組めるようになっていくのです。
もしも給食に不安を感じたら
✅ アレルギーがある場合は、必ず学校に伝えて対応をお願いする
✅ メニュー表を家庭でチェックして「明日はカレーだね」と話題にする
✅ 苦手な食べ物が出ても「一口だけ挑戦してみよう」と励ます
まとめ
日本の学校給食は、栄養バランスの取れた食事を提供するだけでなく、子どもたちが「食べること」そのものから学びを得る貴重な教育の場でもあります。献立を通じて新しい食材や調理法に触れることができ、苦手な食べ物に挑戦する勇気や、友達と同じ食事を分かち合う一体感を味わうことができます。また、配膳や片付けといった活動を通して、食べ物が届くまでに多くの人が関わっていることを知り、「いただきます」「ごちそうさま」という言葉に込められた感謝の意味を自然に理解していきます。
中国から日本へ転校してきた家庭にとって、給食は最初こそ未知の存在であり、不安を感じることもあるでしょう。しかし、実際に体験した子どもや保護者の声から分かるのは、給食は単なる「食べる時間」ではなく、学校に馴染むための大切なきっかけになっているということです。友達と笑い合いながら同じ料理を食べることが、心の距離を縮め、学校生活を前向きにする原動力となります。
もちろん、アレルギーや食の好みに関する心配はありますが、学校側は丁寧な配慮を行っており、家庭でも献立表を活用したり、事前に似た料理を体験させたりすることで、子どもは安心して給食を受け入れられるようになります。こうした積み重ねは「食べ物に挑戦する力」や「多様性を受け入れる姿勢」といった、これからの社会を生きる上で欠かせない力を育むことにつながります。