今回の記事では、日本の小中学生が使っている「国語」の教科書について、在日中国人のお子様や保護者の方にもわかりやすく紹介していきます。
「国語」と聞くと、日本語に慣れていないお子様にはちょっと難しそうな印象があるかもしれません。しかし、内容をきちんと理解し、ポイントをおさえれば、国語の勉強もスムーズに進めることができます!

国語の教科書はどんな内容?
国語の教科書は、ただ「日本語」を学ぶためだけのものではありません。思考力・表現力・感じ取る力などを育てるために、さまざまな文章や活動が盛り込まれています。
以下、それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。
① 物語文(文学作品)
どんな内容?
子どもたちに感情移入や想像力を育てるために、児童文学や昔話、現代の物語作品などが登場します。
例:
- 小学3年:『モチモチの木』『ちいちゃんのかげおくり』
- 小学4年:『ごんぎつね』『一つの花』
- 小学5年:『大造じいさんとガン』
- 小学6年:『やまなし(宮沢賢治)』
学ぶこと:
- 登場人物の気持ちを読み取る
- 物語のテーマを考える
- 自分の経験と照らし合わせて感じる力を育てる
在日中国人の子にとってのポイント
日本の昔話や季節感、戦争体験を題材とした物語など、日本独特の文化的背景があるので、親や先生の補足説明があると理解が深まります。

書店や図書館でもよく見かける有名な話ばかりです。
手に取って親子で読んでみるのもオススメです!


② 説明文・論説文
どんな内容?
科学・自然・社会・人間関係など、幅広いテーマについて書かれた情報文や意見文が載っています。
例:
- 小学4年:『アップとルーズで伝える』…カメラのズームの意味を考える
- 小学5年:『天気を予想する』…天気予報がどうできるか
- 小学6年:『言葉による見方・考え方』…言葉の選び方と伝わり方
学ぶこと:
- 大事な情報を見つける力
- 段落の構成や要点の整理
- 自分の意見を持ち、理由を説明する
在日中国人の子にとってのポイント
日本語の語彙や表現に慣れていない場合、内容よりも言葉でつまずくことがあります。最初は図や絵を使いながら理解するのがオススメです。
③ 詩・俳句・短歌
どんな内容?
日本特有の短い詩の形式である俳句や短歌などが登場します。
例:
- 【詩の例】いるかは 海のなかで ばくてんする いるかは 空をとぶ(谷川俊太郎)
- 【俳句の例】 古池や 蛙とびこむ 水の音(松尾芭蕉)
- 【短歌の例】 春の夜の 夢のうき橋 とだえして 峰にわかるる よもの白雲(藤原定家)
学ぶこと:
- 日本語のリズム、音の美しさを感じる
- 自然や季節の表現を理解する
- 自分でも作ってみることで表現力を高める
在日中国人の子にとってのポイント
俳句や短歌は日本文化の感性を学ぶ絶好の機会。漢字の読み方や言葉の意味は難しいこともあるので、親子で調べたり、絵にしてみたりする工夫が効果的です。


④ 漢字・文法の学習
どんな内容?
漢字の読み書き、送り仮名、品詞、主語・述語の関係など、文章を正しく読む・書くための基礎を学びます。
学ぶこと:
- 学年別の漢字(小学1年で80字、6年までに1,026字)
- 句読点や助詞の使い方
- 文の組み立てや言葉の使い方


在日中国人の子にとってのポイント
中国語と同じ漢字でも「意味・読み方・使い方」が異なることが多いので、単語カードや書き取り練習が特に重要です。例文と一緒に覚えると定着しやすくなります。
⑤ 話す・聞く活動
どんな内容?
音読、会話、意見発表など、「人に伝える力」と「人の話を理解する力」を育てる活動も重要視されています。
学ぶこと:
- 自分の意見をまとめて話す
- 相手の話をきちんと聞く
- 友だちの発表を聞いて質問する
在日中国人の子にとってのポイント
日本語を使う機会が少ないと苦手意識が強くなりがちです。家庭での会話や、先生・友達とのやりとりの中で、「間違ってもOK」という安心感を与えることが大切です。


まとめ:国語は「言葉の力」と「心を育てる」教科
日本の国語教科書は、単なる「日本語の読み書き」を学ぶだけのものではありません。
読む・書く・聞く・話すという4つの言語技能をバランスよく身につけながら、考える力、表現する力、人の気持ちを感じ取る力を養う構成になっています。
物語文で登場人物の気持ちを想像し、説明文で論理的に読み取る力を磨き、詩や俳句で感性を育てる。
さらに、発表や対話の活動を通して、自分の思いや意見を人に伝える練習も取り入れられています。こうした多角的な学びが、将来社会で生きていく上での大切な「ことばの土台」になるのです。
中国から来た子どもたちにとって、日本の国語学習は最初とても難しく感じることがあります。
特に、日本語特有の言い回しや曖昧な表現、文化的背景が必要な文章、詩や俳句の感覚的な内容は、語彙力だけでは乗り越えられない壁になることもあります。
しかし、国語の力は一朝一夕で身につくものではなく、「少しずつ、じっくり」と積み重ねていくことが大切です。
最初は難しくても、子どもたちはきっと、自分のペースで「国語の世界」を楽しめるようになります。
そしてその過程で、ことばの力だけでなく、心の力も育っていくのです。